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2018年7月23日 (月)

晩期マルクスとコミュニタリアニズム

7月21日に慶応大学で社会主義理論学会主催の講演会があって、大内秀明氏が「晩期マルクスと〈共同体社会主義〉」をテーマに講演した。旧校舎の70名定員くらいの狭い教室でやったのだが、満席であった。内容的には、この間の私のブログと重なる部分が多いというか、それがさらに深化された内容であって、大内秀明氏は「晩期マルクス」を語りながら「私も晩期でありまして、晩期にならなければ晩期にマルクスが到達した社会主義の深遠はわからない」と、労働力商品化の問題と共同体の形成の関連を宇野弘蔵の『資本論』の読解を手がかりに解明していくのである。その解明は近刊の大内秀明編『自然エネルギーのソーシャルデザイン』(鹿島出版会2018.4)をまとめる傍ら、3年前から「仙台・羅須地人協会」で行ってきた「資本論講座」ですすめられてきた作業で、やっと出口に近づいて来たという印象であった。さっき友人で宇野派の矢作さんから電話があって、「昨日の大内先生の講演会に行かれなかったので、内容を教えてほしい。facebookはやっていない」と言うから、昨日facebookに上げたPowerPointにそってメモしただけのものをとりあえずブログに載せるところ。(※一部写真など外している)

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①左は近刊の大内秀明編『自然エネルギーのソーシャルデザイン』(鹿島出版会)。右は大内理論の源泉のマルクス、モリス、ザスリッチ。

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②80代半ばになられた大内秀明氏は、「人生は晩期にならなければ、晩期にマルクスが到達した社会主義の深遠はわからない」と、それを解き明かす。コミュニズムは、初期マルクス以来「共同所有」といった所有論的に把握されてきたが、晩期のマルクスはそれを「コミュニタリズム=共同体社会主義」と見直した。

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③パリ・コミューンがマルクスに与えた衝撃、仏語版『資本論』はマルクスが責任を持って改訂した最終版『資本論』、モルガンの『古代社会』を読んでマルクスは共同体論の研究をやり直し、ザスーリッチへの返書でマルクスは「所有法則の転変」を批判し、価値形態論などバックスによる『資本論』評価は、晩年のマルクスを喜ばせたという。

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④ロバート・オウエンとマルクスに始まった社会主義は、これまでの正統派であったエンゲルスとレーニンの国家社会主義、それとモリスとバックスの晩期マルクスを継承した共同体社会主義に分岐した。下の写真は、モリス、バックス、エレノア・マルクス。

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⑤この系譜は、堺利彦が大杉栄の本の書評に書いたものだが、後に宇野弘蔵が『「資本論」五十年』法政大学出版会1970)の中で対談者にこれを示して自らの社会主義を語りだしている。要は、宇野弘蔵にとっての社会主義はロシア革命以前からあった社会主義、それも堺利彦あたりから始まっているわけである。

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⑥『資本論』第1巻7篇24章の「所有法則の転変」→純粋資本主義「自律的運動法則」が宇野弘蔵をインスパイアして、宇野理論の形成につながっている。「所有法則の転変」とは、「個人的労働による個人的所有の否定→社会的労働による個人的所有の資本主義的矛盾の否定→その否定としての社会的労働による社会的所有」という「否定の否定」のこと。

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⑦宇野弘蔵は、「経済法則」と「経済原則」を明確化して、「経済原則=超歴史的・歴史貫通的な原則、類的存在としての世界人類共同体」の実現が社会主義であると考えていた。

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⑧労働力の再生産は労働者個人だけの再生産ではなくて家族・次世代の再生産であり、生産と消費の経済循環と一体となって、地域共同体の基礎となる。宇野弘蔵のこの「変革の主体」と「地域共同体」発見の原点に1948年に書かれた「労働力なる賞品の特殊性について」があるが、ほとんど読まれていない。研究すべし。

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⑨⑧の説明の図。

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⑩社会的連帯経済といわれるものを大内秀明氏が描けばこうなる、『自然エネルギーのソーシャルデザイン』を併せて読めば、より具体的に理解できる。

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⑪「おだやかな革命」は、大震災からの復興を描いた映画のタイトルとのこと。共同体社会主義への道は、かつてのような階級闘争に比べれば「おだやかな革命」なのであり、東北の人々による復興への努力の中から姿を現すだろう。

以上

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コメント

平山君、先日は有難う。その上、こんな紹介まで、感謝、感謝。今日、仙台・羅須地人協会で皆に報告しました。皆成功を喜び、9月から新ゼミナールを始めます。
また、木曜には生協のメンバーが集まり、広瀬川水系の小型水力の発電事業を相談し、羅須地人協会も連携します。宮沢賢治も喜んでくれるでしょう。お礼とご報告まで。大内秀明 拝

投稿: 大内秀明 | 2018年7月28日 (土) 19時29分

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