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2017年3月25日 (土)

「コミュニティとしての労働組合」の構想

「変革のアソシエ」特別講座「新しい労働運動の構想」

1.主旨
 非正規労働者が四割を超え、正規労働者の組織率も実質一桁に落ち込みながら、正規労働者による企業別組合が労働組合の顔をしてなおかつ翼賛化している日本の労働組合の現状、国境を越えて99%の労働者の貧困化をすすめる新自由主義とグローバリズム、さらには先進国労働運動に蔓延する排外主義への対抗軸としての「新しい労働運動の在り方」を構想します。
 資本主義への対抗軸として、かつての社会主義に代えて「社会連帯経済」が言われるようになりました。市場経済に対して、「非営利」「共同所有」「協同労働」といった「社会的企業」の連帯による非市場型の経済的領域の拡大をめざすもので、スペインやイタリアにその先進的な事例があり、ヨーロッパ各国や韓国において法制化や自薦が模索されています。
Photo 「変革のアソシエ」においては、共同代表の伊藤誠氏が『資本主義の限界とオルタナティブ』(岩波書店2017)をまとめられ、大内秀明氏は『自然エネルギーのソーシャルデザイン――スマートコミュニティの水系モデル』を近々出版される予定です。前者は「自由主義と資本主義の限界と21世紀型オルタナティブの模索」の書であり、後者は「文明の転換による東日本大震災からの復興」をめざして、現状分析とソーシャルデザイに基づいた実践的なコミュニティ構想です。また、関西においては3月25~26日に、「大阪労働学校」主催、「ソウル宣言の会」共催で「社会的経済のシンポジウム」が開かれます。
 しかし、「社会的企業」や「社会連帯経済」が資本主義、市場経済への対抗企業や対抗経済になるかについては、「営利」と「競争」の代わりに「非営利」と「連帯」を重視すればそうなるという話ではありません。理念として正しいから、市場経済の中で協同組合が株式会社にとって代わるというのは希望としては言えても、実際には協同組合が株式会社化して終わるというのがこれまでの現実です。資本主義の最高の発達形態である株式会社を協同組合に代えるには、資本主義を原理的に超えていかなくてはなりません。そして、その要諦は何かといえば、私たちは資本主義の矛盾と限界の根幹にある「労働力の商品化」をなくすことだと考えます。堀利和氏が言われるように、「労働力商品が止揚」されないところでは、障害者や外国人労働者への差別はなくならなりません。「社会連帯経済」が資本主義のオルタナティブになるには、「労働力の商品化をなくす社会的企業」づくりと、それらを核にした「地域コミュニティ」や大小の「コミュニティ内シェア経済」の形成が必要だと考えるわけです。
 そして、「労働力の商品化をなくす社会的企業」づくりをすすめるためには、協同組合も含む企業における労働組合の役割が重要だと考えます。小野寺忠昭氏が語ったように、戦後民主主義の解体は総評労働運動の解体から始まり、現在、労働組合と称するものはかつての第二組合であり、そこには労働運動はありません。労働運動の再構築のためには、例えば「正規・非正規」の差別をなくすためには、広い意味での「労働力の商品化の止揚」と、それを支える「コミュニティの形成」が必要だと考えるところで、かつての地区労とコミュニティユニオンを一体化させたような、正規も非正規も、外国人もニートも、個人事業主や零細企業主も、誰もが対等に参加できる「コミュニティとしての労働組合」の構想を考えるところです。
 「アソシエ=アソシエーションの形成」の要諦は「労働力の商品化の止揚」にあり、そこれをすすめるには宇野理論と労働運動とのコラボレーションが重要であり、宇野派の先生方を代表にもつ「変革のソシエ」こそそれが可能だと私は思うわけで、以上企画する次第です。

2.経過、プレ講座
2016年11月22日 小野寺忠昭「戦後労働運動は何だったのか」
2017年3月25日 鳥井一平「移民と労働運動」
■主 旨:「トランプ大統領の登場に象徴されるように、いま世界の先進国では移民労働者の排斥運動が起こっています。日本には移民労働者はいないというタテマエになっていますが、高齢化と生産人口の減少は外国人労働者を拡大しつづけてています。しかし、移民は認めないから「研修制度」をつくって、中国やアジア各地から「研修生」と称するいわば人身売買に近いかたちでの外国人雇用が行われていおり、鳥井一平氏は10年以上前から、研修現場から逃れてくる「研修生」を保護し、雇用主と闘いつづけて、2013年には「人身売買と闘うヒーロー」としてアメリカ国務省から表彰された人です。新自由主義とグロバリリゼーションの果てに、先進国労働者もその多数は格差拡大の負け組みになろうとしています。排外主義を超えて、共に働ける環境の形成、そういうものとしての労働運動を考えてみたいと思うところです。」
■日 時:3月25日(土)18:00~
■場 所:「変革のアソシエ」事務所 at 中野(地図参照)
■テーマ:「移民と労働運動」
■講 師:鳥井一平(全統一労働組合)
■参加費:1000円(初参加の方)、500円(継続参加の方)

3.今後
①プレ講座の報告を「変革のアソシエ」29号(2017年6月予定)に掲載予定。
②6月か7月に、全体の構想を共有化するために、シンポジウムを行う。
 テーマは、「労働力商品が止揚をめざした地域労働運動と地域コミュニティの形成」、「コミュニティとしての労働組合は可能か」
③2017講座の講師とテーマとスケジュール。
大内秀明(変革のソシエ共同代表):
伊藤誠(変革のソシエ共同代表):資本主義の限界とオルタナティブ
河村哲二(変革のソシエ共同代表)
鎌倉孝夫(埼玉大学名誉教授):資本主義の最高形態の株式会社とそれを超える協同組合
樋口兼次(中小企業研究所):
嘉山将夫(埼京ユニオン):
都筑建(NPO 太陽光発電所ネットワーク):
堀利和(NPO 共同連):
関西地区からの報告:事業活動をする労働運動
④東北における「地域循環型社会構想、広瀬川流域スマートコミュニティ構想」をすすめる「復興協同センター・仙台」と提携しながら、2017年内に出版が予定される『自然エネルギーのソーシャルデザイン――スマートコミュニティの水系モデル』の出版にあわせて、仙台での現地見学と交流会などを行い、「(4)「社会的企業」と新たなビジネスモデル(5)雇用労働から協働労働へ「働き方」を考え直す(6)新たな「コミュニティ」共同体の創出」などをテーマに交流とフィールドワークを企画したいと考えます。

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2017年3月22日 (水)

【キクオのヒキダシ】

社長なのに金のない社会評論社の松田社長と日高屋あたりでちょい飲みすると、「これおもしろいから読んでみて」と新刊本をいただくことがあり、「叢書【キクオのヒキダシ】」シリーズで加藤幸治『復興キュレーション』、大西大『雲のうえの千枚ダム』の二冊をいただいたので読んだ。昨年の秋に出版されて、私もこのブログに書評を書いた青木孝平『「他者」の倫理学』が、めったに増刷にならない社会評論社の本ではあるけど、「500部増刷になった」と松田社長は今でも喜んでいるから、『復興キュレーション』と『雲のうえの千枚ダム』が1冊でも多く売れるようにと、Amazonに提灯書評を書いたところ。おもしろいから、読んでね。

1『復興キュレーション』評
内容は、3.11東日本大震災によって被害を受けた博物館及びそのコレクションのレスキューの話で、著者は東北学院大学の民俗学の先生、教え子の大学院生と学生をひきいて牡鹿半島の鮎川浜にあった石巻市鮎川収蔵庫、鯨博物館の復興をめざした6年にわたる文化財レスキューの記録である。「キュレーション」とは何かというと、学芸員のことを英語でキュレーターと呼びますが、「キュレーション」とは著者の造語で、「情報の収集・整理・分類・保管・管理、そしてそれをある意味ある形で社会に提示する活動をさす言葉」として広めたいとする。「個々の経験を、震災の〈記憶〉の継承や教訓のようなかたちで一般化するのではなく・・・人生の数だけエピソードがあるという事実に、わたしは極めて重要な意味を見出しています。エピソードの集積から地域のくらしのイメージを共有し、それを復興していく地域社会のこれからについて構想する材料としてもらうのが、わたしたちの地域への関与のアプローチです」。「わたしたちは、展示やワークショップを通じてくらしのエピソードを集積しながら、地域の人びとが生活の歴史において大切にしたいと考えるローカルな価値の掘り起こしを行ってきました」。「わたしの考える文化における〈より良い復興〉とは、人々が被災経験を通じて、地域文化の再発見、再解釈、そして再定義をこころのなかで進めることによって、その地域で生きていくことへの意味を創り出していくことです」とある。『復興キュレーション』を読むと、柳田国男の『遠野物語』では難しくてわからないという人でも、読むことによって民俗学をフィールドワークできる。日本の近代社会が、西洋の誤読によってゆがまないように、柳田国男は『遠野物語』を書いた。同じように、大震災からの復興がハコモノ建設で終わらないように、著者はこの本を書いている。民俗学とは何か、人文系の学問とはどういうものなのか、読みながら学べる好著です。

2『雲のうえの千枚ダム』評
著者は大学で考古学を学んで、20代で中国に留学し、本書は著者が30代の終わりから10年近く海南島と雲南でフィールドワークして、「自分が育った生活世界とは、まったく異なる生き方があることを自ら知るという、異文化体験」記である。「調査に深く埋没していくにつれて、考古学では明らかにできない、たくさんの物語がフィールドに隠されていることに気づいた」、「現地に出かけて自分の目でみて人と出会い、本やテレビやインターネットなどの情報による自分の常識が壊れていくおもしろさはやめられない」という。その後、再び日本で調査するようになった著者は「国や民族や歴史の違いはあっても、人が自然のなかで生きていく上で、共通する原理のようなものがあるのではないかと思うようになった。その一つが〈身の丈にあった知恵と技術〉が、活きている時代、地域ほど、〈身の丈にあった知恵と技術〉に多様性があるのでは、ということである」として、江戸の終わりに房総丘陵にくり貫かれた二五穴や、茅野市の台地を潤す坂本養川といった灌漑水路を紹介して、「坂本養川や二五穴は百数十年たっても、人にも自然にも迷惑をかけずに立派に現役で活躍し、メンテナンスさえしっかりすればこれからも使い続けることが可能だ。戦後発明された某原子力発電所は約40年で破綻したが、人が作り上げたシステムとしては江戸の終わりの発明のほうがはるかに優秀だ」としている。写真が豊富で、読みながら雲南はベトナムに近い山里での生活が体験できる。既成理論になじんだ頭をリフレッシュするには、とてもいい本です。

この二著に、柳田国男の『遠野物語』と宮沢賢治を読み足せば、3.11東日本大震災からの東北の復興の道筋が見えてくるのではあるまいか。

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