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2015年12月21日 (月)

2015年6月21日「協同社会事始め」

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先週、石見尚氏から『日本型協同社会事始め』(論創社2015.6)という新刊書が送られてきた。石見尚氏は1925年の生まれだから、今年で90歳になられるわけだが、「事始め」とつけられた書名に歳を感じさせない。お礼に感想を書いて送ろうとさっそく読んだわけだが、雨降りを幸いに座椅子せんべいしながら、『都市に村をつくる』(日本経済評論社2012)と『日本型ワーカーズ・コープの社会史』(緑風出版2007)を併せて再読した。高齢になられた孤高の協同組合学者が、何を書き伝えようとするのか、それを確かめたく思ったわけである。

石見尚氏は、1960年代から当時は亡霊とさえ言われた生産協同組合にあるべき協同組合の在り方を見つけ、世界のそれをフィールドワークし、1977年に『協同組合新論』(家の光協会)を書いて異端の協同組合学者と言われた。その後1980年のICAモスクワ大会で「レイドロウ報告」がなされて、そこで「生産協同組合」と「協同組合地域社会(協同組合コミュニティ)」が再評価され、生活クラブ生協などはその実践に入って行き、主流派系の研究誌にさえ「問題意識の鋭さ、その新鮮さにおいては石見氏以上のものはいまのところ見いだすことはできない」(生活ジャーナル1989.3)と書かれた。

石見尚氏が80歳代で書かれた上記の3著を読めば、石見協同組合理論の核心は「レイドロウ報告」の確信、ワーカーズ・コープ論と協同組合コミュニティ論にあることが分かる。これには私もまったく同意である。「協同組合と国家」については、私は今年の勉強課題。方法論はちがうけど、書けたら石見尚氏からご批判をいただきたいと思っている。あと、生協の現状についての以下の意見なども私も同意見なので、先日のパルシステム本部での座談会のつづきとして、以下記しておくところ。

「新自由主義によるグローバリゼーションに対抗するには、国内農業・商工業の循環を回復することによって、産業の空洞化を阻止し、働く場を回復する経済原理を樹立しなければならない。換言すれば、人間主義の原理に立つ地域経済を構築しなければならない。・・また協同組合は組合員の利益だけの内向きの経営方針を再検討して、地域社会のための積極的経営に転換しなければならない」。(『都市に村をつくる』p67)
「(2000年以降には都道府県を越える広域流通組織がつくられ)その背景には店舗購買に替わる個別配達がある。地域生協は広域化によって個人主義化に追随した。その結果、組合員はなお増えてはいるが、人間的絆の弱さを固定化し、あるいはそれに拍車をかけたことは否めない。90年代以降、地域生協は経済的に安定したが、組織活動は弱体化した。その象徴の一つは共同購入によるコミユニティでの日常的な班活動が消滅したこと、第二に地域生協の専従職員が滅少し、店舗事業の担い手が主婦のパート労働に替わったことである。地域生協は地域に人間的足場を持だない卸売りと系列小売業の組織に変質したのである。地域生協をいかにして協同組合コミュニティとして再建するか。第一にすべきことは、相互扶助の環境を取り戻すため、組織の地域分割と自主運営の強化である。・・店舗の空き部屋などを、ワーカーズ・コープやNPOの事務所として貸し出すことができれば、協同組合コミュニティはレイドローのいう活動センターに近づくであろう。第二は、生協従業員の三分の二を占めるパート労働者の正規職員化である。・・」と。(前掲書p126-8)

90歳になられてからの「協同社会事始め」、どの協同組合人も新たなる「協同社会事始め」を始められることを、私も願うところです。

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