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2015年12月21日 (月)

2015年3月20日「今年の課題」

先日、社会評論社に寄った時に社長の松田さんから、「面白いから読んでみな」と言われて、ケヴィン・B・アンダーソン『周辺のマルクス』(社会評論社2015.2)をいただいた。アメリカの社会学者が書いて一橋系の若手が翻訳したA5版2段組400ページの本だから読みにくそうと思ったのではあったが、昨晩読み終えると実に面白かったのであった。

マルクスのベラ・ザスリッチ宛の手紙やマルクスが最後に自分で編集したフランス語版『資本論』の再評価や、それらを通した唯物史観の見直しやマルクスの共同体論の評価は、この間、大内秀明氏においても『ウィリアム・モリスのマルクス主義』(平凡社新書)やモリス&バックス『社会主義」(晶文社)で展開されているわけだが、近年の欧米におけるマルクス研究においても、そういう方向で盛んであるようで、それを宇野派やマル経派ではない一橋系の若い学者たちが翻訳、紹介しているというのも面白い。

著者のケヴィン・B・アンダーソンはカリフォルニア大学の先生で、1989年前後から新しく翻訳され出した第二『マルクス=エンゲルス全集』(新MEGA)をネタ本にして、それまでの全集にはなかったマルクスの書いたノートや、マルクスが特派員として『ニューヨーク・トリビューン』に書き送った記事などをベースに、マルクスの読み直しをしている。とりわけ1870年以降のマルクスのノートには、当時の資本主義のグローバリゼーションを背景にした現代に通ずる分析や、共同体をベースにした複数の社会主義への道が模索されているという。

日本では戦前から『マルクス=エンゲルス全集』が翻訳され、翻訳の種類もいくつもあるのだが、本書によれば、晩年のマルクスの書いたものはエンゲルスの単線的歴史観(=唯物史観)によって書き直されていたり、初めての全集であるソ連発行の「リャザーノフ版」などは、ソ連に都合の悪い文章は載っていなかったりして完全な全集ではなく、なんと完全なものはソ連崩壊後に国際的な協力で編集、発行されつづけており、欧米ではマルクスの資本主義批判の有効性が見直されているという。

以上は本書の概要で、内容的なことは別途また書いてみたい。それにしても、戦前から欧米よりもマルクス研究の盛んなことが自慢であった日本のマル経派ではあったが、今では新自由主義に経済学を席巻されて見る影もなく、駄インテリたちはピケティに入れあげるという情けなさである。私みたいな門外漢が嘆いても仕方ないけど、宇野理論をベースにした協同体論の構築だけは、今年の課題にするところ。早朝に読み終えて、とりあえずの感想を書いた。

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