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2015年12月21日 (月)

2015年2月27日「ピケティ・ブームというた知的惨状」

2月は冬ごもりの月で、読めた本は3冊だけだったけど、けっこう濃い読書ができた。読んだ本は、柄谷行人『トランスクリティーク』(岩波現代文庫)と宇野弘蔵『資本論に学ぶ』(ちくま学芸文庫)、ジェニファー・コックラク=キング『シティ・ファーマー』(白水社)の3冊。

柄谷行人は『トランスクリティーク』で、カントの超越論的批判の内在的論理、それはカントがヒュームの経験論にインスパイアされて大陸的合理論とイギリス的経験論を超える理論を、ドイツ人でありながら長くイギリスに住んだマルクスが書いた『資本論』にアナロジーして、デカルトからヘーゲルの西洋近代哲学の脱構築を構想し、「トランスクリティカルな対抗運動」=「アソシエーションのアソシエーション」を提起するわけだが、柄谷行人にそれを可能とさせたのは、まさに宇野経済学であったと思ったところ。『トランスクリティーク』は難しい本だけど、私は哲学が趣味だから、時間をかけてけっこう面白く読めた。

『資本論に学ぶ』は1975年に東大出版会から出た本の文庫化。解説は注目の若手、白井聡が書いていて、以下のようにある。
「1996年に大学に入学した私の個人的経験から言えば、当時宇野弘蔵の名を口にする先輩も教師も、私の周囲にはいなかった。かくて、戦後日本社会でかなりの程度確立されたマルクス主義の文化的ヘゲモニーは、失われていった。・・・万事において競争原理を導入しさえすればあらゆる問題は解決できるという単細胞思考に基づいた施策が繰り返し失敗し(ても)この教義が死なないという現象を目にするとき・・文化的ヘゲモニーの交替によって知性のレベルがどれほど低下したのかを、痛感せざるを得ない。富裕層への累進課税の提言があたかも画期的な主張であるかの如く大々的な注目を受けている状況(世界駅なピケティ・ブーム)は、こうした知的惨状を鮮やかに映し出している」と。
前にも書いたけど、やはりピケティを読む前に宇野弘蔵の『恐慌論』(岩波文庫)を読むべし、ということであろうか。

『シティ・ファーマー』は、欧米でピケティの『21世紀の資本』がベストセラーになる一方で、ロンドン、パリ、カナダ、アメリカ中部や西海岸、キューバの都市で何が進行しているのかをルポしたノンフィクションである。遺伝子組替えによって食料問題は解決すると言うモンサント社など遺伝子組替企業や多国籍穀物企業の工業的農業とその独占、それに追随するこれまた単細胞思考に対して、人々はささやかな自衛=都市農業の自営を始めつつある。この本は、ぜひ読むべしである。

「仙台・羅須地人協会」の東京支部というかたちで「東京・羅須地人協会」を立ち上げて、都市におけるコミュニティづくりや農業について考え始めたところであったが、『トランスクリティーク』や『シティ・ファーマー』は大いに参考になる本であった。2月もあと1日、冬はもう抜けたかなというここ数日は四温の日和である。今年の春は、少し忙しくしようと思っている。おつきあい、よろしくです。

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