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2009年7月17日 (金)

脱労働力商品への道-その2-

さて、それでは「脱労働力商品的生き方」なり、そういった人々の「コミュニティ」はどこに成立するのかと言えば、それは現在の資本主義社会の中であり、市民社会の中である。純粋資本主義は19世紀イギリス社会を対象化して抽出しえたわけであるが、19世紀イギリス社会は資本家と労働者だけで成り立っていたわけではない。

「19世紀の国際的な商品交歓の中心にあってイギリスは、その中葉には最も典型的な資本主義国となったのであるが、しかも資本家でも、労働者でも、また資本家的土地所有者でもないというような旧来の社会層を残していた」(P15)のである。「旧来の社会層」というのは、いわゆる小生産者、農民、職人層ではあるが、カーライルやラスキンやカーペンターやモリスといった知識層もいて、その周辺において協同組合やギルドといった非資本主義的な試みをする人々も多数いたわけである。

農民を中心とする小生産者が多数を占めた戦前の日本のような後進資本主義国において、大正期以降には、ラスキンやカーペンターやモリスらに学んだ知識層による試みが始まるが、明治期においては、知識層は孤立しており、カーライルを学んだロンドン帰りの夏目漱石は、文学を試みるしかなかった。そして、そこに所謂「遊民(高等遊民)」を描くわけであるが、遊民とは単にブルジョワや地主の遊び人の息子であるわけではなかった。漱石の描いた遊民は、いわばトータルにものが見える、時代認識のできる人であった。

近年、いわゆるグローバリゼーションや格差拡大がすすむが、世界中の人々が労働力商品化されたわけではない。私自身の例をあげて申し訳ないが、「貧乏な遊民(下等遊民)」も増えているわけである。「貧乏な遊民」というのは、いわゆるワーキング・プアであるわけではない。どちらかと言うと、高等遊民と同様にトータルにものが見える、時代認識のできる人である。そして、どうしてそれが可能になるのかと言えば、労働力商品ななることから逃れているからである。

では、労働力商品にならずして、どうやって生活するのかと言えば、昔ふうに言えば、いわゆる「小生産者」になることである。『恐慌論』によれば「小生産者はその労働手段としての道具や、或いは生産手段としての原料は商品として買入れるにしても、その労働自身は自らの労働力によるものであって、その生産過程は決して全面的な商品の生産とはいえない。それと相対応してその生産物もまた徹底的に商品たるものではない。少くともその一部は自己のための使用価値として、いい換えれば商品としてではなく生産するという傾向を残すものである。たといかかる生産過程からいわゆる剰余労働生産物にあたるものを得るとしても、それは自己の労働によるものであって、資本のように客観的にその獲得を追求するものではない」(P54)ということであり、要するに、自分で仕事の手段とスキルを持っていて、営利追求ばかりを目的にしない働き方と言える。

そう、私はDTPをやるためのソフトやパソコン他の機材とスキルを持っているが、仕事のない時は、自分のために使っている。

「労働力が商品化すというのは、勿論、労働力の所有者が生産手段を所有しないために、自らこれを使用し得ない、ということを前提とするわけであるが、労働力が商品化してくると労働者が他人のために労働するということによって生産過程が行われる。これは単に生産物か商品として他人のための使用価値をなすというだけのことではない。生産過程そのものがその生産過程において労働する労働者にとって他人のための生産過程である。商品形態は社会の基礎にまで入って来るわけである」(P54)。

だから、商品形態は社会の基礎にまで入った資本主義社会を変えるためには、「労働力の所有者が生産手段を所有すること」、そういうものとしての「脱労働力商品的生き方」が必要なわけである。そして、近年の脱工業化の進行は、人々が脱労働力商品的に生きる可能性を増している。

大内秀明氏は『恐慌論の形成』にこう書いている。
「ポスト工業 化の知識社会は、工業化社会における機械=資本による 支配とは異なり、知識労働力の自発的・自主的なサービス労働が中心となる」。(P276)
「労働手段が機器=facility になったり、工場制度の意義が薄れて仕事場・工房=workshopになったり、さらに情報機器の利用によりモバイル型就労やテレワークも拡大する。そのため、サテライトオフィスや在宅勤務などのSOHOといった市民社会型生活者の生産活動も増加する」。
「ポストエ業化によって、これら公益的事業体が、NPO(非営利活動法人)などとして、その活動領域をいちじるしく拡大している。工業化の企業社会に代わって、ポストエ業化のNPO社会への転換さえ予想されるが、①非営利性、②多様なミッション(使命)、③ボランティアの参加、④水平ネット型組織、モジュール(部分単位)型など、独自の新たな組織原理をもった経営体が登場している。このように知識サービスの就業により、工業化の企業社会における正規従業員を中心とした資本・賃労働関係は崩壊して、ポスト資本主義社会ともいえる知識社会の地平が見えはじめたともいえるのではないか」(P277)と。

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