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2007年11月 9日 (金)

賀川豊彦

 賀川豊彦の本を読もうと、mixiの賀川豊彦のコミュで本の案内を求めたら、ロバート・72シルジェン著『賀川豊彦』(新教出版社2007年5月刊)を紹介されたので、ネットで発注して、仕事の合間に読み終えた。
  以前、日本人の書いた賀川豊彦の伝記なども読んだが、今回のアメ リカ人の書いたものの方が、ずっと重厚である。注や参考文献を見ると、英文のものがほとんどで、賀川豊彦は日本でよりアメリカでの方が有名だという話にもうなづける。

 賀川豊彦は、キリスト者、牧師でありながら、日本の労働組合、生活協同組合、農業協同組合、共済組合等などの父でもあり、私的には「日本のロバート・オウエン」とさえ言えるが、さらに「日本のガンジー」とさえ言われ、ノーベル平和賞の候補にもなり、戦前に『死線を越えて』などの大ベストセラーを書いた人だが、現在では、図書館で探しても本は少なく、一般的には「忘れられた思想家」とも言える。

 先にふれた『西暦2000年の協同組合』の中で、レイドロウ氏によって「協同組合地域社会なるものを創設するという点で,都会の人々に強力な影響を与えるためには,たとえば日本の総合農協のような総合的方法がとられなければならない」(p146)と、日本の農協が高い評価を受けているが、生産、消費、信用、サービスまで、協同組合によるトータルな相互扶助社会のイメージのルーツこそ、まさに賀川豊彦にあると言える。

 賀川豊彦とアメリカとの関係は、プリンストン大学に留学したということだけでなく、後に、実践的キリスト者として、社会改革のために協同組合を広めることを説いて、アメリカ中を講演して回り、アメリカの協同組合に大きな影響を与えていることにあった。

 賀川豊彦は、日本では世界最大の生協であるコープこうべ(旧・灘神戸生協)の創設者であることが知られているが、アメリカ最大の生協であったバークレー生協なども、その影響を受けており、そこでは日系人が雇用され、理事にも日系人がいたという。
 しかし、バークレー生協は80年代末に倒産し、コープこうべも経営に苦しんでいる。両者とも素晴らしい生協であったとは思うが、成功してエスタブリッシュメントになるということは、協同組合にとっては「死の接吻」ともなるのだった。

 コープこうべとバークレー生協は、いわば兄弟生協でもあった訳だが、ロバート・シルジェン著『賀川豊彦』を読んで思うことは、思想というのは一国的なものであるというよりは、グローバルなものであるということである。だとすると、思想はグローバルなのに、協同組合はローカルだというのは、間尺に合わない。前のブログからのつづきで言えば、では、グローカルな協同組合の在り方とはいかなるものなのだろうか?

 グローバリズムは世界のアメリカ化とも言われるが、1960年代のアメリカにおける公民権運動の指導者のキング牧師は、ガンジーの非暴力主義に学んでいて、そのガンジーの非暴力主義は、ヘンリー・D・ソローの市民的不服従に学んでいて、19世紀のアメリカに生まれたソローやエマソンらの超絶主義は、東洋思想から影響を受けている。

 賀川豊彦よりも先にアメリカに渡った鈴木大拙は、アメリカに禅を普及させるが、やがて禅はアメリカの対抗文化に影響を与え、ビートのゲイリー・スナイダーは日本に渡り、60年代からの日本の対抗文化の源流ともなる。
 ゲイリー・スナイダーがアメリカのサンジカリズムの労働運動であるIWWの末裔を自認していたことは前に書いたが、プリンストン大学に留学した賀川豊彦は、ニューヨークで移民労働者による大きなデモに出会い、労働運動に目覚める。そして日本への帰途、ユタ州で日本人会の書記の仕事につき、日本からの農業労働者のために働いている。

 賀川豊彦がユタ州にいた頃、ワシントン州ではIWWのメンバーが殺された“エベレットの虐殺”が起き、後にゲーリー・スナイダーはこの事件をジャック・ケラワックに語って聞かせる。また、元祖ボブ・ディランのIWWのバラード詩人のジョーヒルは、1915年にソルトレイクで殺されている。果たして、このことを賀川豊彦が知らなかったということがあるだろうか?

 永井荷風の『あめりか物語』には、20世紀初頭のアメリカ西海岸には、多くの日本人労働者がいたことが書かれている。ビートの源流には、「ホーボー」と呼ばれた渡り鳥的労働者がいたが、その「ホーボー」という言葉は、日本語の「方々」から来ているとも言われる。

 また、日本を追われた幸徳秋水は、アメリカに渡って彼らを組織した。幸徳秋水は、堺利彦らと『平民新聞』を刊行して、日本における社会主義運動の創設者だが、賀川豊彦は『平民新聞』を読んで、そこから協同組合を学んだようである。

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マーティン・ルーサー・キング牧師から学んだ言葉をブログでアップしています。よろしかったらご訪問ください。 [続きを読む]

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