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2007年7月 7日 (土)

梅雨の頃

 朝から曇り空で、いかにも降り出しそうではあったが、風が湿っていて蒸し暑いだけ。夜勤明けなのに寝付かれずにいて、気分転換に、八重洲のブックセンターに本を買いに行って来た。
 有楽町に出ると、ビックカメラでプリンターのインクを買い、湿った都会を汗をかきかき歩く。ブックセンターはエアコンが効いていて、汗を乾かしながらしばし立ち読み。2冊で6195円、久しぶりに本を買い、この夏の課題図書とした。
 6月中は、『夜明け前』にひきつづき、同じく藤村の『桜の実の熟する時』と『春』を再読、再々読した。書かれた順番は、『春』、『桜の実の熟する時』、『夜明け前』の順だが、話しの内容からすると、『夜明け前』、『桜の実の熟する時』、『春』の順序である。時の流れを超えて、意識は朔行する。このあたりに、文学の成立する面白さがある。
 明日は降るのかもしれないが、気分はどこにでも行ける。ひんやりとした店内、人気の無い書棚の前で、やがて梅雨も明けたら、この夏は、どんなふうに過ごせるだろうかと、まあ、そんなことを考えていた訳である。

 私は今年で58歳になったから、10年前には48歳であった。48歳は私の干支だから、その年にはいいことがあるかもしれないと思っていたら、春先に母が癌であることが判明し、秋口には職場の同僚の横領が発覚し、やがて私はその詰め腹リストラで関連会社に飛ばされることになるという散々の年になってしまった。次の春から2年間、関連会社へ出向に出された訳だが、2年経って出向期間が終わっても戻れないということであったので、50歳という切のいい歳に、私は会社勤めを辞めることにしたのだった。
 その後、失業期間中に職業訓練校に入れてDTPを覚えて、それを生業にして、その後の8年間をなんとか生きてきた訳だが、58歳になって振り返るに、あれから10年経ったかと感慨がある。昨年あたりから団塊の世代のリタイアと、そのセカンドステージが話題になりだしたが、私にしてみれば、セカンドステージは既に8年も経過したところであり、出向に出された時からすれば、既に10年目である。

 出向期間というのは、執行猶予期間みたいなものであった。この10年間は雇用環境が激変した時代であったが、なんとかやってこられたのは、出向期間中にあれこれ考えたりすることが出来たせいかもしれない。私の48歳はろくな年ではなかったが、仕事以外での人とのめぐり合いには恵まれた。
 この10年間の前半は、詩を詠みながら仕事に苦労しながら凌ぎ凌ぎ、後半はDTPとNPOをしながら貧乏生活にも慣れてといった具合だったが、さて、この先はどうするかという思いが、最近、時々するようになってきた。
 会社勤めをつづけていた団塊の世代は、これからセカンドステージを迎える訳だが、10年早くセカンドステージしてきた私は、サードステージを考える訳である。そして、48歳からの2年間に出向期間という執行猶予期間があったように、58歳になった私は、60歳からのサードステージに向けて、しばし充電期間を持とうかと思う訳である。
 
 この夏をどう過ごせるかで言えば、夏と言うのは短いものである。海好きの海遊びは、混んだ夏休みを避けて、いつでも夏だが、海水浴シーズンで言えば、梅雨が明けたと思ったら、もう土用波が来て、やがて台風シーズンとなり、夏は一瞬である。
 先月から、週3日間、本屋で働き始めた。リンドバーグというクルマとバイクの本の専門店で、洋書もあつかうし、ヤマハのSR専門のレストアショップも併設した、その筋では有名な店である。それまでの週3日のパート仕事も辞められずにいるから、この夏はほとんど休みが取れそうになくて、実際は、この夏の過ごし方など、限られたものである。だから、思いはもっと先に向かう。

 10年前の夏、癌になった母と、その1ヵ月後に起きる横領事件がまるでデジャブしたかのような、漠然とした不安を抱えながら、当時持っていたスバルのワゴンでツーリングに出かけた。その夏も天候の不順な夏で、びしょ濡れのテント泊をしたりして、北陸道を走って、芭蕉の『奥の細道』のむすびの地である大垣まで走った。
 いつか、そのつづきをやろうとしながら、やがて失業して、クルマも売ってしまったのだが、そのつづきをやりたいという思いが、またふつふつと沸いてくる。つづきはバイクで走ろうと思っている。だから、あれこれ充電しながら働いて、とりあえずはバイクを買い換えようと思っている。
いま梅雨の最中に思うことは、そんなことである。

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